冷戦終了後の国際社会では、軍縮・不拡散を前進させる機運がかつて無かったほどに高まっています。これは、一つには世界の二極対立をもたらした冷戦構造が崩壊したことにより軍縮・不拡散促進の展望が拡がったこと、また、他方では冷戦構造の崩壊が、逆に、民族対立等の不安定要因を顕在化させ、その解決の一環として軍縮・不拡散促進の必要性が広く共有されるようになったからです。
このような状況に対し、わが国は新たな対応をとらなくてはなりません。それは、具体的には、わが国が知恵を出し、議論をリードして国際社会の合意形成に貢献していくことです。さらに、各種の軍縮・不拡散措置の実施にわが国が積極的に関与していくことです。そのためには、官民に分散している情報、知見、技術等を一同に集積し、総合的な活用を図る必要があります。
以上の背景の下、1995年7月に河野洋平外務大臣(当時)が軍縮業務を円滑に行うための国内体制の強化を提唱し、これを受けて、1996年7月に(財)日本国際問題研究所に軍縮・不拡散促進センター(軍縮センター)が設置されました。
設立当初から15年度末までは、中国遺棄化学兵器回収・処理に関する調査・研究が軍縮センター活動の大半を占めておりましたが、右処理事業が本年度から本格化することに伴い、軍縮センターによる調査・研究は終了しました。
右に代わって、16年度から軍縮センターの主要活動となってきたのが、CTBT国内運用体制の整備・運営です。これは、CTBT上、国が負う義務の履行を代替する国内体制です。さらに軍縮センターは、日本の積極的な軍縮外交を多方面に渡り支援するために各種の活動を行っていきます。軍縮センターの主要な活動は以下のとおりです。
- 1. 軍縮・不拡散実施活動
- (1) CTBT国内運用体制事務局
軍縮・不拡散を前進させるため、軍縮センターは包括的核実験禁止条約(CTBT)国内運用体制の事務局を務めています。国内運用体制事務局として軍縮センターは、CTBT違反の核実験の探知に係わる日本独自のデータ解析を行う2ヵ所の国内データセンター(NDC-1、NDC-2)の整備、ならびにCTBT検証制度の一つである国際監視制度(IMS)の監視施設(337ヵ所)の内、日本に設置される10ヵ所の監視施設の建設・運用を円滑に実施するための調整・連絡活動等を行っています。また事務局は、NDC-1、NDC-2の整備状況を模擬試験等を行いながらモニターしています。このほかにも、NDCの人材育成を支援し、さらに、将来CTBT国内運用体制として必要となる業務(CTBT検証制度の一つである現地査察(OSI)関係等)についても対応を進めています。
- (2) その他の軍縮・不拡散実施活動
CTBT国内運用体制事務局の他にも、軍縮センターは、日米軍備管理・軍縮・不拡散・検証委員会トラックⅡ会合の日本側事務局や、米国の戦略国際問題研究所(CSIS)が主催するグローバル・パートナーシップ強化に関する運営委員会および国際会議の日本側事務局も努めており、各方面での軍縮・不拡散の実施を推進すべく活動しています。
- 2. 軍縮・不拡散調査・研究活動
- 国民の軍縮・不拡散に関する知識を深めるため、今日的問題および根源的問題について、国内の有識者を集めて幅広い調査・研究を行い、問題の解決策について提言します。また、軍縮・不拡散関係の国際会議やシンポジウムにも当センター所長や研究員が積極的に参加しています。
- 3. 軍縮・不拡散情報発信活動
- 国民の軍縮・不拡散に関する知識を広めるため、各種情報を収集し、Eメール、ホームページ、パンフレット等により、軍縮・不拡散に関する情報や知識の普及に努めます。
- 4. 軍縮・不拡散人材育成活動
- 将来の軍縮・不拡散を担う人材を育成するため、軍縮・不拡散問題講座を実施します。また、毎年、国連が主催する軍縮フェローシップの日本プログラム部分を企画・実施しています。
- 5.軍縮・不拡散交流活動
- 軍縮・不拡散の知的交流を進めるため、国内外の軍縮・不拡散問題の専門家による講演会・懇談会を開催します。また、国内の専門家を募り、各国のカウンターパートとトラックⅡの意見交換を実施します。そして、これらにより得られた成果をホームページに発表する等して活用を図ります。
軍縮センターはこれらの活動を通じ、「行動する軍縮」として、軍縮・不拡散を促進するために具体的な行動をとるわが国の軍縮・不拡散外交の一翼を担っています。
所属研究員 |
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所長 |
須藤 隆也 |
企画部長 |
香川 美治 |
主任研究員 |
小田 哲三 |
高橋 圭一 |
研究員 |
戸筏 洋史 |
堀部 純子 |
客員研究員 |
小山 謹二 |
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