UNMOVICは、湾岸戦争以降継続している対イラク経済制裁解除の条件である大量破壊兵器とその運搬手段であるミサイルの廃棄を検証するため、国連安全保障理事会(安保理)決議1284(1999年12月17日)によって設置された補助機関であり、イラク国内にある大量破壊兵器等の生産・貯蔵施設に対する査察を行い、その結果を安保理に報告することを主たる任務としている。
そもそも国連は、1991年、湾岸戦争停戦の条件として、イラクにある生物・化学兵器、核兵器及びそれらの運搬手段であるミサイルの脅威の除去を挙げ、その査察を目的として安保理決議687(1991年)に基づいて「国連イラク特別委員会(UNSCOM)」を設置したが、イラクによる査察拒否・妨害が相次ぎ、活動中断に追い込まれていた。UNMOVICはUNSCOMの任務を引き継ぐ一方、経済制裁下でイラク国民の窮状が国際社会の関心事項となったため、イラクがUNMOVICの活動に協力し、主要な軍縮義務を履行した場合には、経済制裁を一部停止することとしていた。
しかし、イラクはUNMOVICの受け入れを拒否したため、査察が実施されないままとなっていた。本年1月のブッシュ米大統領の一般教書演説がイラクを「悪の枢軸」と名指ししたことから、イラク情勢が世界の注目を集める中で、改めてイラク国内での査察実施問題が取り上げられることとなった。そこで、安保理は、11月8日、決議1441を採択して、「これまでの安保理決議に基づく軍縮義務に従う最後の機会」としてUNMOVICの受け入れを迫ったのである。同決議は、これまでのイラクの安保理決議違反を改めて非難し、仮に決議1441を遵守しない場合には、「重大な結果を招く」と警告している。
UNMOVICによる査察は現在も継続中であり、また、同決議に基づくイラクからの「申告書」が国連に提出されたが、それらの結果次第では、イラクに対して軍事的な制裁が実施される可能性がある。 (グローバルイシューズ研究員 山田哲也)
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