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AU(アフリカ連合)平和・安全保障理事会


AU(African Union:アフリカ連合)は、発足してから、一年半が経過したが、コナレ委員長を昨年夏マプトで選出して以来、具体的な行動目標を設定しながら動き出し、そのヴィジビリティを高めつつあるようである。

AUが、前身のOAU(Organization of African Unity:アフリカ統一機構)と最も大きく異なる部分は、平和と安全保障の分野においてである。AUは、紛争問題に関して、革新的で且つ実効性のあるメカニズムを構築しようとしているからである。OAUは、紛争処理機関である紛争予防・管理・解決メカニズム(MCPMR:Mechanism on Conflict Prevention, Management and Resolution)を擁していたが、実効的な成果を挙げることは殆ど出来なかった。

去る2月27−28日に、AUの生みの親、リビアのカダフィ大佐の出身地シルテで、第二回AU特別首脳会議が開催された。同首脳会議は、水、農業、アフリカ共通防衛構想、AU平和・安全保障理事会という重要テーマを討議するために開催された。AU平和・安全保障理事会に関しては、同理事会を実効的な組織にするための強力な権限と手段を与えて行く事を検討していくことで、アフリカ各国の首脳は合意した。因みに、シルテの会議では、カダフィ大佐の望んだ「アフリカ統一軍」の創設に関しては、アフリカ各国の首脳は懐疑的で、アフリカ紛争介入軍(アフリカ待機軍)の創設に関する勧告を促すアフリカ共通防衛宣言を発するに留まった。

AUは、OAU時代の反省から、アフリカ紛争に対するAU自体の対応能力を高めるために、その対応メカニズムを強化し、法的には、首脳会議における決定の上で、AUの名において加盟国に介入する権利を自ら承認した。紛争への介入への権限を持つ機関が、AU平和・安全保障理事会である。AU平和・安全保障理事会を創設するための議定書は2001年のダーバンでの第一回AU首脳会議において満場一致で採択された。

AU平和・安全保障理事会の構成は、モデルとなった国連安保理同様に、総数15カ国であるが、国連安保理の様に、常任理事国と非常任理事国の様な決定権に関する決定的な差異は存在しない。任期2年で選出される10カ国と任期3年で選出される5カ国とに大別される。各理事国の選出は、AU首脳会議によって行われるが、地域の配分が考慮されることになる。任期2年の10カ国においては、西部アフリカから3国、北部アフリカから1国、東部、中部、南部アフリカから夫々2国ずつ選ばれる。当初は、西部からも2国であったが、西部の加盟国数の多さが考慮され、1国増えることとなった。任期3年の5カ国は、各地域から1国ずつ選出される。

3月中に、アディス・アベバに於いて行われる特別会議において、AU平和・安全保障理事会のメンバーを選出することが予定されており、早ければ、AU平和・安全保障理事会は4月より実質的な活動を開始することになる。

しかしながら、その実効性に関しては、依然未知数である。シルテの会議で、コナレ委員長より勧告されたように、平和・安全保障理事会は、依然として、実効的な介入を行う、強力な権限、予算及び道具を有していないからである。

議定書によれば、「理事会は、紛争予防・管理・解決のための常設決定機関である(第2条)。その目的は、アフリカにおける平和、安全保障、安定を促進し、紛争に対して先に対応し、予防することにある(第3条)。その機能は、早期警戒と予防外交(第6条)にあり、その主要な権限は、対立と紛争の先取りと予防(第7条)にある。更に、理事会は、加盟国に対する介入を総会に対して勧告することが出来る(第7条)1」とある。

これは、平和・安全保障理事会が、他の多くの国際機関に見られるように、討議及び議論の機構であり、フォーラムのようなものに過ぎないということを意味している。即ち、AU平和・安全保障理事会が、NATOの様な、集団防衛協定に基づき、自動的な介入や対応を可能ならしめる強制的な決定機関ではないということなのである。

アフリカ諸国の首脳がこのAU平和・安全保障理事会に如何に実効性を持たしていくことが出来るのか注視していかなければならない。

1: AU平和・安全保障理事会創設議定書(PROTOCOL RELATING TO THE ESTABLISHMENT OF THE PEACE AND SECURITY COUNCIL OF THE AFRICAN UNION)よりの抜粋。


2004年3月7日記
(研究員  片岡貞治)

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