研究レポート

台湾海峡有事シミュレーション2:概要と評価

2024-03-29
小谷哲男(日本国際問題研究所主任研究員、明海大学教授)
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「伝統的安全保障リスク」研究会 FY2023-1号

「研究レポート」は、日本国際問題研究所に設置された研究会参加者により執筆され、研究会での発表内容や時事問題等について、タイムリーに発信するものです。「研究レポート」は、執筆者の見解を表明したものです。

はじめに

本稿は、2023年度に日本国際問題研究所が実施した台湾海峡有事を想定したシミュレーションの概要と評価をまとめたものである。

今回は日本の反撃能力が各アクターの思考や有事の流れにどのような変化をもたらすかについて注目した。また、各ターンの戦況を日米台の士気に反映させ、士気がゼロになるとゲーム終了とした。

1. シミュレーションの概要

第1ターン(海上封鎖)

  • 中国は台湾に対する演習名目での海上封鎖の実施
  • 米国は参戦を宣言し海上封鎖を阻止。参戦宣言により士気−2。
  • 日本は参戦を宣言するが、海上封鎖の阻止には不参加。

士気:台湾5,日本5、米国3

第2ターン(封鎖の成功)

  • 中国は在日米軍およびグアム基地をミサイル攻撃するとともに日本と台湾に都市攻撃(失敗し日本と台湾の士気は低下せず、米国の士気は上昇)、台湾海峡と台湾東岸海域を支配。
  • 米国は中国沿岸部の基地への攻撃を行う。
  • 日本はミサイルの発射を見送り。

士気:台湾5、日本5、米国5

第1回外交交渉(決裂)

中国の停戦条件 台湾周辺からの日米の撤退

日米の停戦条件 海上封鎖の解除、停戦を受け入れなければ台湾を国家承認

第3ターン(封鎖の解除)

  • 中国が台湾海峡に加えて東シナ海を支配、台湾への上陸と尖閣諸島の占拠(台湾と日本の士気低下)
  • 米国は中国内陸部と沿岸部の基地にミサイル攻撃、台湾東岸海域の支配。
  • 日本は中国内陸部と沿岸部の基地にミサイル攻撃、米国と台湾東岸海域の支配。

士気:台湾3、日本3、米国5

第4ターン(中国により台湾への大規模都市攻撃)

  • 中国は台湾に対する都市攻撃(これにより台湾降伏)、東シナ海と台湾海峡の支配継続
  • 台湾海峡の支配(着上陸侵攻の実施)
  • 東シナ海の支配(米軍の接近阻止)

日米の対応

  • 東シナ海での海上優勢の確保(南西諸島の防衛)
  • 台湾東部海域での海上優勢の確保(台湾へのアクセス確保、米軍による台湾上陸)

士気:台湾0、日本3、米国4

第2回外交交渉(決裂)

中国の主張

  • 台湾と周辺海域からの米軍部隊の無条件撤退、なければ核の使用

日米の主張

  • 台湾のレジスタンスを支援

残存勢力

中国 水上部隊10→7、原潜1→1、通常型潜水艦8→3
爆撃機4→2、第3世代機15→2、第4世代機22→15、第5世代機7→7
米国 空母打撃群5→4、水上部隊4→4、原潜5→3
爆撃機2→2、第4世代機16→6、第5世代機14→14
日本 水上部隊4→1、潜水艦4→2
第4世代機8→2、第5世代機4→4
来援 豪州(水上部隊1、第4世代機1)
英仏(水上部隊1、第4世代機1)

勝利ポイント:中国5、米国4、日本0

2. 評価

今回のシミュレーションを通じて、以下のことが指摘できる。

  • 中国が台湾の士気低下を狙って大規模都市攻撃を行ったことにより、台湾が降伏することになった。
  • 戦力の少ない日米は東シナ海と台湾東岸海域に部隊を集中的に展開せざるをえなかったため、米軍の早期来援が必要である。
  • 日本の反撃能力は攻撃を受けなければ使えないため、拒否能力として限界がある。
  • 日米のミサイル戦力が増えることで、米国による核使用の必要性が下がる一方、中国による核使用の可能性が高まる可能性がある。

3.検討課題

以上のシミュレーションの評価から、次のような検討課題が指摘できる。

  • 台湾への大規模都市攻撃に対する抑止。
  • 台湾が降伏した場合の日米の対応。
  • 反撃能力の保有が中国による核使用につながらないようにエスカレーション管理の再検討。
  • 中国側の士気をゲームに取り入れ、核使用にどのような影響を持つのか考察。